「教育技術の法則化運動」
向山の最大の論争は、「法則化運動」に関することである。
『現代教育科学』(明治図書)をはじめ、『教育』(国土社)、『体育科教育』(大修館書店)、『ひと』(太郎次郎社)など、さまざまな教育誌で幾度となく取り上げられ、数々の論争を引き起こした。
法則化運動に対する代表的な批判として、次のようなものがあった。
1 法則化運動には、「思想」がない。
2 法則化運動は、マニュアル主義である。
このような批判に対して、向山は以下のように反論した。
1 法則化運動には、「できない」子どもをなんとかして「できる」ようにさせたいという思想がある。「教育技術」を求める教師と求めない教師の差は、どこから生まれるのか。「できない、わからない子どもにどう対処しようとしているか」の違いに由来する。目の前に跳び箱を跳べないで悩んでいる子がいる。「できない」子どもを前にして、痛みを感じなければ「教育技術」は必要ない。
2 さまざまな子どもが集まっているのが教室である。たったひとつの方法だけでは上手くいくはずがない。「教育技術」をたくさん知っていれば、その中からその場にあわせたものを選ぶことができる。我流(自己流)の人は、自分のやり方しか知らない。だから条件がかわっても、いつも同じことをしている。そんな人に限って「法則化はマニュアル主義である」と批判する。