「自由で平等な場からの出発」-誰でもリーダーになれる
「自由で平等な場からの出発」とは、1972年、山梨で開催された第21次全国教研(全国教育研究集会)における向山のレポートの題名である。
教師として4年目の冬、向山は、全国教研の東京都の代表となり、生活指導分科会にて「差別のない『自由で平等』な学級づくり」の実践研究を発表した。
1 クラスを組織するにあたり、係、当番、班、研究グループを分ける。
2 係活動、実行委員会、委員会活動は、児童の要求で決定する。希望すれば誰でもなれる。
3 それぞれのリーダーは、立候補とし、じゃんけん(またはくじ)で決める。
4 児童の活動の中心をしめたのは、係活動と学年集会だった。
5 学年集会は、すべて児童の実行委員会の手で企画、運営され大成功を収めた。夏休みキャンプファイヤー実行委員、スポーツ大会実行委員、学芸会実行委員、伊豆高原実行委員、夏休みプール大会実行委員、卒業文集実行委員…
向山の発表は、リーダーを決める際の「立候補じゃんけん」をはじめ、全生研(全国生活指導研究協議会)の「班・核・討議づくり」の実践を否定するものであった。
そのため、全国から集まった全生研の実践家から、「どの子もリーダーになれる機会を提供したいという思いは同じでも、集団との関わりを無視してジャンケンで班長を決めることによって、班長と班員の固定化を打破できるという主張が理解できない」「文部省と同じだ」「勉強しなおしてこい」などの、批判を受ける。
向山が提案した「『自由で平等』な学級づくり」の実践は、のちに法則化運動の広まりとともに、20代・30代教師によって追試された。そして、各地で「じゃんけんで民主的な子が育つはずがない」「技術に傾斜しすぎている」「理論がない」などの論争を巻き起こすことになった。