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向山洋一の仕事

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授業の原則十ヵ条

できているところまでを認めて励ます向山(1995)

100版をはるかに超えるロングセラーで
向山が提唱した授業上達論

「授業の原則十ヵ条」とは、授業を上達させるための原則である。向山が学生運動から得た経験則と、教室や子どもの事実に基づいた現場の目線でまとめられている。向山のロングセラー『授業の腕をあげる法則』(明治図書)で初めて紹介された。

平積みになった『授業の腕をあげる法則』(1986)
平積みになった『授業の腕をあげる法則』(1986)

「授業の原則十ヵ条」とは、以下の原則をいう。

  • 第一条 趣意説明の原則(指示の意味を説明せよ)
  • 第二条 一時一事の原則(一時に一事を指示せよ)
  • 第三条 簡明の原則(指示・発問は短く限定して述べよ)
  • 第四条 全員の原則(指示は全員にせよ)
  • 第五条 所時物の原則(子どもを活動させるためには、場所と時間と物を与えよ)
  • 第六条 細分化の原則(指導内容を細分化せよ)
  • 第七条 空白禁止の原則(たとえ一人の子どもでも空白の時間を作るな)
  • 第八条 確認の原則(指導の途中で何度か達成率を確認せよ)
  • 第九条 個別評定の原則(だれが良くてだれが悪いのかを評定せよ)
  • 第十条 激励の原則(常にはげまし続けよ)

第一条は趣意説明の原則である。例えば、「ゴミを拾います」は、やること(行動)だけを言うアマチュアレベルの指示。教師の指示がなければ、行動できない子どもが育ちかねない。これを「教室をキレイにします。ゴミを〇個拾いなさい」とすると、趣旨(目的)が入り、心構えができるようになる。さらに「教室をキレイにしよう。自分でやりたいことをやってごらん」とすると、趣旨だけを伝え、やることは子どもに任せることになる。このような指示ができる教師は、プロレベルの腕前といえる。

ノートを持ってこさせ個別評定をする向山(1985)
ノートを持ってこさせ個別評定をする向山(1985)

書籍『授業の腕をあげる法則』は、大学、教育委員会、企業等の研修のテキストとして採用されたこともあり、100版を超えた。当時、初版5,000部がすぐに品切れとなり、発行半年で2万冊を超えたという。その後も、同著は多くの教師に支持され、中国語、韓国語、英語などにも翻訳・出版された。
現在、『新版 授業の腕を上げる法則』として学芸みらい社から再刊され、Kindle版にもなっている。

Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0BJVDSBRN/

中国語、韓国語、英語などにも翻訳・出版された (2013)
中国語、韓国語、英語などにも翻訳・出版された (2013)

『授業の腕をあげる法則』がこれほどのベストセラーになった要因を、向山は「面白くて」「役に立つ」からだと言う。実際、研究者の理論や理想論ではなく、「授業の上達論」について正面から論じた初めての本であった。
向山の著書は、書店のビジネス書コーナーに置かれることも多い。