教育技術の法則化運動(以下、法則化運動)は、向山が創設した20世紀における日本最⼤の民間教育運動である。「すぐれた教育技術・方法を集め、広める」ことを目的とした。活動期間は1984〜2001年。法則化運動の関連雑誌は『教室ツーウェイ』(明治図書/1986~2015)など10種類以上、関連書籍は1,000冊を超える。法則化運動に賛同するサークル(法則化サークル)の数は全国で1,000にのぼった。
「跳び箱が跳べるようになった」「漢字が苦手だった子が100点を取るようになった」など、目の前の子どもたちが変化した事実と、誰でも全国どこからでも参加できる運動だったことから、法則化運動は20代・30代の教師から支持され、次々と法則化サークルが誕生し、全都道府県に広がった。
法則化運動は、NHKをはじめとするTVや新聞などに取り上げられたり、『イミダス』(集英社)、『知恵蔵』(朝日新聞社)などの現代用語辞典にも掲載されたりするなど、1980年代後半から1990年代にかけての社会現象のひとつとなった。
向山は、法則化運動の創設にあたり、「すぐれた教育技術・方法を集め、広める」方法として、次の3つを考えていた。
そして、すぐれた教育技術・方法が全国各地に埋もれていると考え、それらを「法則化論文」(応募論文)として集めるシステムを生み出した。論文を集めるための法則化合宿や、運動を広げるための全国縦断向山洋一講演会も実施した。
1985年に発刊された『第1期法則化シリーズ』(明治図書/のちの『日本教育技術方法大系』)は、発売3か月で9,000セット、累計10万部のベストセラーとなった。1988年には、『法則化ビデオシリーズ』(明治図書)を発刊。2001年に、コンピュータによる検索システムの代わりとして、「TOSSインターネットランド(現在のTOSSランド)」を開設した。
2001年、向山は『法則化シリーズ』を再編集し、『日本教育技術方法大系』全15巻(明治図書)として出版したあと、法則化運動は「法則化運動の会則」にしたがい解散した。
なお、向山は、教育技術を検証し理論化するために「日本教育技術学会」の創設(1988)にも尽力した。
法則化運動は、解散後もさまざまな教育研究および他の教育運動に影響を与えている。