向山洋一公式ウェブサイト 向山洋一公式ウェブサイト

用語解説

  • 教育技術の法則化運動
  • ヒストリー

日本教育技術学会

1988年、子どもたちにとって価値ある教育技術の発掘・創造、会員相互の情報共有や研究協力の促進を目的として創設された。2022年、日本教育技術学会は向山洋一教育賞を創設した。

日本教育技術学会:https://www.js-eduskill.or.jp/

  • 教育論争

「批評の文学教育」の出現-文学の授業は感動重視でよいか

向山は、『国語教育』(明治図書)1982年10月号にて、「文学教育においては、『感動』ではなく『分析』の部分こそ授業すべきである」と主張した。

当時、多くの国語教育研究団体は、「『初発の感想』が授業を通して変わり、『終末の感想』において感動が深まる授業がよい」と主張していた。そのため向山は、「国語で育てる力を〈文章を検討する〉力に限定し、言語・表現技術に偏向している」「言語・表現の末端のみにかかわり、文芸の本質である人間の追求がおろそかにされ、〈文章の検討〉のみにとどまっている。人間不在の教育という以外にない」と批判された。

向山は、自ら創り出した「分析批評の授業」実践をもとに

1 授業で深まるのは感動ではない。解釈である。
2 (その解釈に至った)「分析」のしかたを授業すべきである。

と反論した。

  • 教育論争

「100マス計算」への批判

「100マス計算」とは、1990年代の終わりに、基礎学力を定着させる手法としてマスコミに取り上げられ、広まったかけ算九九の練習方法である。1960年代に全国で行われていた。
10×10のマス目の上段と左横に0~9までの数字を書いた表を準備する。数字は毎回順序をかえる。上段と左横の数字をかけ算して、交差するマス目に答えを記入させる。100のマスが埋まるまでの時間を計測し、最後に答え合わせをする。
向山は、「100マス計算では、できない子はできるようにならない」「ワーキングメモリの小さな子への配慮がない」「他の教材を学習する時間が激減する」と批判した。

  • ヒストリー

分析批評の授業

「話者」「視点」「対比」等、いくつかの分析のための用語を使い、「ことば」を根拠にして文学的作品を読み解く国語授業を「分析批評の授業」という。
向山の「分析批評の授業」では、すべての子どもが用語を共有するため、同じ土俵で「討論」ができ、自分の解釈を「批評文」として明晰な文章でまとめられるようになる。
1975年、向山は日本の小学校で初めて「分析批評の授業」を行った。
向山の代表的な「分析批評の授業」に、『やまなし』(宮沢賢治)、『春』(安西冬衛)、『桃花片』(岡野薫子)などがある。

  • 教育技術の法則化運動
  • ヒストリー

法則化運動の会則

一.この運動は、二十世紀教育技術・方法の集大成を目的とする。「集める」「検討する」「追試する」「修正する」「広める」(以上まとめて法則化と呼ぶ)ための諸活動を行う。

二.運動の基本理念は次の四つである。
 ① 教育技術はさまざまである。できるだけ多くの⽅法をとりあげる。(多様性の原理)
 ② 完成された教育技術は存在しない。常に検討・修正の対象とされる。(連続性の原理)
 ③ 主張は教材・発問・指⽰・留意点・結果を明⽰した記録を根拠とする。(実証性の原理)
 ④ 多くの技術から、⾃分の学級に適した⽅法を選択するのは教師⾃⾝である。(主体性の原理)

三.目的・理念に賛成する人は、事務局に連絡して支部・サークルを結成できる。支部・サークルは定期的な研究会等の活動を行う。

四.事務局は、支部・サークルに対して「定期的な情報」「企画の優先案内」「資料等の斡旋」等の活動をする。当分の間、京浜教育サークルが事務局を担当する。

五.事務局と支部は対等の関係にある。

六.この運動は次のとき解散する。
 ① 目的を達成した時。
 ② 事務局を担当する支部・サークルがなくなった時。
 ③ 二十一世紀になった時。

なお、解散を「二十一世紀になったとき」と設定した理由は、法則化運動が「二十世紀」の教育技術・方法の集大成を目指していたからである。創設時点で解散の時期を定めた点においても、法則化運動はそれまでの教育運動とは大きく異なっていた。

  • 教育技術の法則化運動

法則化論⽂

授業の事実を、追試できるように表した論文のこと。だれもが追試できるように、授業の骨格となる「教材」「発問」「指示」「留意点」を具体的に書くという特徴がある。
授業の中核である「発問」「指示」を、実際に話すとおりに書くという手法、「前書き(はじめに)」を省き「主張から書き始める」という構成は、これ以降の教育書、学習指導案、研究紀要の記述にも影響を与えた。

  • 向山型指導法

向山一門

向山の実践を継承し、次の世代へ発展させるシステムとして誕生したのが、「向山一門」(1993~)である。
茶道・花道・能・狂言など、百年、千年と続いている芸道は、「師匠-弟子」の関係の中で創られてきた。教師の授業技量も、これらの芸道と同じ面を持つといえる。2023年、向山一門には、「直弟子」「孫弟子」「曾孫弟子」まで、約300名が所属している。

  • 向山型指導法

向山型国語

「日常生活の中では身につけることができない国語の力」を習得させるために、向山は以下の基本システムを創り出した。

1 向山型要約指導:「桃太郎」の要約、段落の要約、全文の要約など。向山は、正しい方法で要約すれば、要約した子どもたちの結果はどれも同じになると主張した。 

2 向山型説明文指導:問いの段落を問う、問いの文を問う、問いの一字を問う、答えの文を問うなどの「構造中心型」の授業。および、トピック・センテンス、要点となる一文を見つける、全文要約などの「要約中心型」の授業。

3 向山型作文指導:文を長く書かせる授業、書き出しの授業、イラスト作文、視点変換作文、鉛筆対談作文、パロディ作文、日記指導、返信の書き方など。

4  向山型分析批評:話者と作者、視点、対比、主役と対役、イメージ語、クライマックス、モチーフ、主題、討論、評論文など。

5 漢字指導システム:指書き、なぞり書き、写し書き、空書き、テストのやり方など。

6 漢字文化の授業:漢字の成り立ち、漢字の意味など。

7 五色百人一首指導システム:最初の指導、読みのテクニック、リーグ戦など。

8 「テストの解き方」基本パターン:書き抜き問題、要約問題、理由や目的を問う問題、「どのように」「どうやって」問題、述語を問う問題、設定を問う問題、文章構成、指示語の問題、接続詞の問題、書き直し問題、文の組み立て、言葉の意味、熟語・文字、漢字など。

9  向山型問題づくり指導:問題づくりに取り組ませる前提条件、一問できたらもってきなさい、例示のパーツ、個別評定のパーツ、問題集をつくるパーツ、問題集を解くパーツ、物語の主題に迫るためのパーツなど。

10 言語・語句指導システム:「かける」の授業、入門期の文字指導、くっつきの「を」、五十音図の授業、「○○○しい」の授業、辞書を作る人になったつもりで、漢字パズルなど。

11 一時(いっとき)読解と一字(いちじ)読解:一時読解とは、題名・作者名・登場人物等の設定や指示語等の基礎的問題をテンポよく次々と答えさせる読解指導のこと。一字読解とは、「わたしのげんとう」(私の幻燈)の「の」の意味のように短い言葉を検討させる読解指導のこと。

  • 向山型指導法
  • ヒストリー

向山型算数

算数の指導にあたっては、次のような実践的な問題があった。

1 できない子をどのように指導するのか
2 はやく計算ができてしまった子をどうするのか
3 練習スキルをどのようにするのか
4 授業のはじめをどうするのか
5 ノートチェックをどうするのか
6 これらをすべて満足させる算数の授業とは、どのようなものなのか

このような問題を解決するために、向山はまったく新しい算数の授業システムを創り出した。それが、向山型算数である。向山型算数には、以下のような特徴がある。

1 教科書を使って、教科書通りに教える
2 リズムよくテンポよく教える
3 1時間に1回以上、ノートチェックを行う
4 授業の終わりに『あかねこ計算スキル』を使う

「向山型算数」の広がりとともに、全国の教室で「平均点90点以上になった」「算数のできない子ができるようになった」という事実が次々と誕生した。
「水道方式」や「問題解決学習」などの従来の算数指導法は、理論から生まれた。教師の多くが「理論が正しければ、いい方法だ」と考え、教室へ持ち込んだ。その結果、授業進度は遅れ、「できない子」はできないままとなり、たくさんの算数嫌いを生み出した。「理論」と「実践」との間には、大きな隔たりがあったからである。

  • ヒストリー

向山洋一教育賞

教育界に貢献する次世代の育成を目指し、2022年に創設された。
主催は日本教育技術学会。日本教育技術学会の個人会員、団体会員、賛助会員が応募できる。2022年12月、「日本教育技術学会静岡大会」にて、教育技術賞、最先端実践賞、学級経営・児童生徒指導賞、向山洋一実践・研究賞、特別賞が表彰された。

向山洋一教育賞:https://mukoyama-award.com/